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■  ポンと村おこし  第50話「七福戦隊」                 ■
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 赤い光をバックにする人影。
「助けてっ!」
 一人走ってきました。
 でもでも、女の人の声です。
「助けてっ!」
「はわわ、あなたは?」
「わ、私は弁天!」
「弁天さま?」
「私はここに囚われていて……」
 見ればなにか楽器持ってる綺麗な人です。
 コンちゃん厳しい目で、
「おぬし、弁財天じゃな、神であろうが」
「お稲荷さま……お稲荷さまが何で人の姿?」
「ポンを見るのじゃ、こやつはタヌキ娘じゃ」
「うわ、びっくり!」
 弁天さま、わたしのしっぽ見て戸惑ってます。
 でも、わたしやコンちゃんを見ながら、
「お二人は……どんなところに住んでいるんですか」
「パン屋さんです」
「その……パン屋さんには……どんな人が住んでいますか?」
「コンちゃん、ミコちゃん、たまおちゃん、シロちゃん、レッドに店長さん」
「お年よりはいますか?」
「うーん、お年より……」
 わたしがコンちゃん見たら、ゲンコツ来ました。
 コンちゃん見た目は若いけど、本当は平家の落ち武者時代なのに。
 わたしが痛くて頭を押さえて小さくなっていると、
「これ、弁財天、爺婆がどう関係あるのじゃ」
「お稲荷さま……七福神をご存知?」
「もちろんじゃ」
「私、おじいちゃんにばっかり囲まれて、つまんない」
「……」
 わたしとコンちゃん、絶句です。
 おじいちゃんとおばあちゃん、そんなにつまらないかなぁ。
 お豆腐屋のおじいちゃんとおばあちゃん、結構お話するもん。
「もう、こんな洞窟でおじいちゃんの相手は嫌っ!」
 コンちゃんにすがりつく弁天さま。
 足音が近付いて来るのがわかります。
 ここは弁天さまを助けるために、戦うしかないみたい。
「コンちゃん、行くよ!」
「うっ!」
「こ、コンちゃん、どうしたの!」
「な、何か知らんが体が……うう……」
 ああ、コンちゃん戦う前からダウン。
「こ、こんな時に役立たずっ!」
「あ、あの、タヌキさん」
「なに、弁天さま、わたしのことはポンちゃんでいいよ」
「ポンちゃん……このお稲荷さまはきっと七福神のパワーでやられたんです」
「え……なにそれ?」
「おじいちゃん達の神通力で、お稲荷さまの能力を封じたのです」
「そ、そうなんだ……なんでわたしは大丈夫なの?」
「それはポンちゃんが獣だからです、タヌキなので」
「それってどーゆー事?」
「神を信じるかどうかで……」
 まぁ、わたし、神さまどうでもいいですね。
 コンちゃん見てると信じられません。
 ミコちゃんだってわたしを兵糧攻めにします。
 たまおちゃんに至ってはダメダメなの。
「ともかく、わたしには神さまの術が効かないから、戦えるわけ?」
「はい」
「む〜、じゃ、やるしか!」
 わたしが両手で打ち出の小槌を持つと、弁天さまびっくりして、
「その打ち出の小槌は?」
「あ、神社の押し入れからゲットしたの、わたしの得物」
「そ、それは大黒の持ち物です!」
「え……そうなんだ」
 って、話している間にも、影が近付いて来ました。
 もう、戦うしかありません。
 あっ、影が飛び掛ってきましたよ。
「きゃーっ!」
 わたし、夢中になって打ち出の小槌、振りまくり。
 でもでも、手応えありました。
 見たらわたしの足元に、二人ダウンしてます。
 頭が微妙に長いおじいちゃんと、亀を持ったおじいちゃん。
 ふふ、敵はおじいちゃんばっかりなら、弱いよわ〜い!
 次なる二人は釣竿とメタボのおじいちゃん達。
「うむ、タヌキ娘、なかなかやりおる!」
「パン屋じゃ一番先輩で偉いんですから!」
「では、我々の攻撃、受けてみるのじゃっ!」
 わたしも打ち出の小槌を構えます。
「おお、それは大黒の!」
「うむ、確かに大黒の打ち出の小槌じゃ!」
 二人、わたしを前後に挟むような立ち位置。
 前に立ってる釣り人の神さま、竿を振るいます。
 わたしの制服の裾にひっかかって、スカートまくり状態!
「きゃー、エッチ!」
「ふふふ、これで動きもとれまい」
illustration zpolice
「どエッチっ!」
「今だ、布袋っ!」
「応っ!」
 後ろのメタボの神さまの声。
 スカートめくりはきっと目くらまし。
 ここでスカートに気をとられていたら負けです。
 振り向いたら、メタボの神さまが大きな袋をわたしにかぶせようとしてますよ。
 腕をガシッとつかまえて、
「なにすんですかっ!」
「袋に入れて拉致するまでっ!」
「な、なんて事を!」
「ほれほれ、タヌキ娘、パンツ丸見えじゃぞ」
 うわ、それ、言われると急に恥ずかしくなります。
 でも、袋に詰められて、拉致されて、どうなっちゃうのかな?
 わたし、弁天さまを思い出しました。
 そしてエロポン知識もリンク。
 結論として、おじいちゃん達に「おもちゃ」にされるとか!
「絶対嫌っ!」
 もう、つかまえた神さまを振り回して、釣りの神さまに投げちゃいます。
 見事に命中して、またしても二人を退治。
 スカート破れちゃったけど、かえって動きやすくなっていいかも。
「ポンちゃんっ!」
「なに、弁天さま!」
「毘沙門がっ!」
 って、槍みたいなので突いてきます。
 今までのおじいちゃんとは、ちょっと違うキャラクターみたい。
「タヌキ娘、神域を侵すとは、覚悟するがよい」
「むむ……なかなかやりますね」
「ほれほれほれっ!」
 うわ、槍の連続攻撃。
 わたしの打ち出の小槌よりリーチがあります。
 打ち出の小槌シュート……でも、今回はなんだか通用しなさそう。
 今、正面にいる毘沙門さんは、見ただけで武芸達者そうなんだもん。
 それに打ち出の小槌シュート、コンちゃんに破られたばっかりだもんね。
 なにか得物、ないでしょうか?
 やっつけてのびているおじいちゃん達。
「袋」はイマイチ使えなさそう。
「釣竿」でスカートめくりは女の子用の攻撃です。
「杖」はリーチありそうだけど、毘沙門さんに通用しないと思う。
 ふふ、わたしが目をつけたのは「うちわ」。
 袋を持ってのびている神さまから、うちわを頂いてダッシュ。
「勝負っ!」
「狸汁にしてくれるっ!」
 毘沙門さんの槍。
 受けるわたしのうちわ。
「ぬっ!」
 槍をうちわで防御成功!
 まるで川中島の信玄公ですよ。
 こうなったらわたしの距離です。
「もらったーっ!」
 打ち出の小槌アッパー、一発で仕留めました。
「わたしの勝ちっ!」
「ポンちゃんすごーい!」
「えへへ、いつもコンちゃんなんかと小競り合いしてるから、実戦はばっちり」
「ポンちゃん、捕まえた〜」
「え!」
 弁天さま、わたしを羽交い絞め。
「ちょ、ちょっと、弁天さまなにをっ!」
「今です、大黒、やっちゃってくださいっ!」
「ま、まさか裏切り!」
「その通り」
 って、わたしの前に、また新しい神さま登場です。
「きゃー、また別の神さまっ!」
「うぬ……それは儂の打ち出の小槌!」
「え……そうなの?」
「神の物を盗むとは、狸汁になるのじゃっ!」
 わーん、羽交い絞めで打ち出の小槌振れません。
 ああ、大黒さまの魔手が迫ります。
 思い出しました、さっきスカート破れちゃいました。
「キーックっ!」
「うぐっ!」
 大黒さまの股間にクリティカルヒット。
 ああ、なんだか嫌な感触です。
 でも、手応え……足応え充分。
 大黒さま、内股&股間を押さえて沈黙なの。
「ああ、大黒まで!」
「ふう……弁天さま、裏切りましたね」
「むむ……でも、まだこっちが有利っ!」
 それはそうです、わたし、羽交い絞めされたままだもん。
 もがいてみても、思ったように脱出できない。
 って、弁天さま、わたしの首になにか細い糸を掛けます。
「ふふ、琵琶の弦で首絞め、ザ・仕事人です」
「ちょ、シリアスな殺し方やめて」
「死ねば一緒です」
「それはそうだけど」
「死んだら狸汁にしてあげます」
 くく……本当に殺すつもりです。
 ここまで来ておいて死んじゃうなんて。
 殺す……逝く……エロ本なら気持ちよくなるところです。
 エロ本なら気持ちよく……ひらめきました。
 確認の意味で、ちょっと首を振って弁天さまを見ます。
 さすが神さま紅一点、美人も美人。
 首を絞められて、声を出すの大変だけど、最後に声、上げちゃいます。
「たたた……」
「ポンちゃん、何が言いたいの?」
「たたた……」
「ふふ、最後に一言、言わせてあげるわ」
 あ、ちょっと糸、緩みました。
 言わせてもらえるなら、言わせてもらいましょう。
「たまおちゃん、すごい美人な『お姉さま』がいますよっ!」
 途端に洞窟内が桃色オーラで満たされます。
 でも、たまおちゃんの周囲だけどんより濁ったオーラ。
 気を失っているはずのたまおちゃん、ゆっくりと立ち上がります。
 うわ、目、赤く光ってるよ。
「お姉さま……お姉さま……」
「たまおちゃん、こっちこっち!」
「お姉さまーっ!」
 ああ、なんだかまた、別の「厄介」を呼び覚ましたような気がします。
 たまおちゃんが迫って来ると、どんよりオーラも波みたいに来ました。
「きゃーっ!」
 あれ、どんよりオーラに当ったら、弁天さまの服が無くなっちゃいました。
 わたしの制服は大丈夫なのに、なんでかな?
「お姉さまーっ!」
「きゃーっ!」
 ああ、弁天さま、たまおちゃんにつかまっちゃいました。
 わたし、関わり合いたくないから、放置しちゃいましょう。
「って……わたしなにしに来てたんだっけ……」
 とりあえず、コンちゃんを揺すって起こしましょう。
 コンちゃん、倒れている神さまを見ながら、最後に登場した大黒さまを指差して、
「打ち出の小槌の事はこやつに聞くとよいのじゃ」
「ああ、そういえばさっき、そんな事言ってました」

 たまおちゃんと弁天さまが「レスリング」してるから、わたし達や大黒さま達は洞窟の
外です。
「この打ち出の小槌は大黒さまのなんですね」
「そうじゃ、儂の神器なのじゃ」
「わたしじゃ使えないなら……はい、お返しします」
「!!」
「わたし、武器としてならコレ使えるけど、この数字は願い事をかなえる数字でしょ?」
「うむ……そうじゃが……」
 わたしのやっつけた神さま、みんな「×」印のバンソウコウ貼ってます。
 そんな神さま達が打ち出の小槌を見つめて、大黒さまがポツリと、
「タヌキ娘はこれを返してくれると……」
「うん……もうたまおちゃんに攻撃される事もないし、得物いらないかも」
 そうです、たまおちゃんから身を守るための得物です。
 たまに新たな敵が登場したりするけど、大黒さまのだもんね。
「わたしはパン屋さんだから、もういりません」
「……」
「じゃ、さようなら〜」
「ちょ、ちょっとちょっと!」
「はい? なんです大黒さま」
「いや、普通はこう見返りを要求されるものなんじゃが……」
「見返り……でも、わたし大黒さま蹴っちゃったし」
 あ、言わなきゃよかったかも。
 大黒さまモゾモゾして渋い顔してます。
 急に怒った顔になる大黒さま。
「タヌキ娘の願い事を三つだけかなえてやろう」
「え!」
「その代わりっ!」
「え……その代わり?」
「儂がおぬしに負けた事、口外せぬと約束せよ」
「え……別に人に言ったりしないけど……どうして?」
「神である儂がタヌキ娘ごときに敗れたとあっては恥」
 大黒さま、わたしの手に打ち出の小槌を握らせます。
「願いは三つまで、儂が負けた事、口外せぬように」
 ふわわ、願い事三回ゲットです。


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NCP5(2010)

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