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■  ポンと村おこし  第46話「モフモフしないで!」            ■
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「ただいま〜」
 レッドが千代ちゃんと一緒に帰ってきました。
 すぐにミコちゃんのところに行ってメロンパンをもらってきます。
 コンちゃんがぼんやりしている席に行きますよ。
 レッドと千代ちゃん一緒に食べ始めました。
 お茶の一つも出すとしますか。
「レッドは千代ちゃんが好き?」
「すきすき〜」
 ああ、なんだか嬉しそう。
 なんたってレッドは眼鏡っ娘スキー。
「じゃ、千代ちゃんとわたし、どっちが好き?」
「千代ちゃ〜」
「ほほう……そうきますか……一緒にお風呂に入ってるのは誰ですか?」
 あ、レッド、黙っちゃいました。
 千代ちゃんの視線感じます。
 小声で、
『千代ちゃんなになに?』
『レッドちゃんをいじめて楽しいの?』
『いじめてないもん』
『そうかな〜』
『一緒にお風呂に入ってるのは誰かって聞いただけだもん』
『ダシに使って「好き」って言わせようとしているのでは?』
『だってわたし、結構レッドの世話焼いてるもん』
『だからって……』
 わたし、改めてレッドに、
「レッドは誰が一番好きですか? え?」
「……」
「一番優しくしてくれるのは誰ですか?」
「……」
「一番かまってくれるのは誰ですか?」
「……」
 メロンパン持った手が止まってます。
 うわ、なんだか恨めしそうな目でこっちを見てる。
 わたしを上から下までじっと見てから、
「そうだ!」
「?」
「モフモーフ!」
「きゃっ!」
「モフモ〜フ!」
「ちょっ! レッド、なにするんですか!」
「モフモフです、モフモ〜フ」
 うわ、超嬉しそうにわたしのしっぽ触ってます。
「ちょ、レッド、モフモフなし、ダメ!」
「モフモフ……ポン姉すきすき、しっぽがすてき」
 もう、本当にこの世の春といった、恍惚とした目でモフモフしてます。
「ち、千代ちゃん助けて!」
「ポンちゃん好かれてよかったね」
「こ、こんなふうに好かれるのは嫌ですっ!」

 一日の疲れをとってくれるお風呂。
 今日はコンちゃんとレッドが一緒なの。
「これ、レッド、動くでない」
「きゃっ! きゃっ!」
「大人しくせぬか、まったくモウ」
「くすぐったーい!」
 コンちゃんがレッドの背中を洗ってるんだけど、苦戦してるみたい。
 わたし、湯船に浸かりながら、
「コンちゃん、しっぽ、しっぽをつかまえて」
「ふむ……こうかの?」
 コンちゃんがレッドのしっぽをつかまえます。
 とりあえず逃げられなくなりました。
 でも、レッド、今度は余計に体をくねらせますよ。
「ポン、あまり変わらんのじゃが……」
「ふふ、レッド嫌がってます、どんどんやってください」
 コンちゃん使ってさっきのモフモフの仕返しです。
「嫌がっておるのかのう?」
「だって、体くねらせまくってるじゃないですか」
「喜んでおらんかの?」
「う……」
 わたし、レッドをじっと見て、
「ね、レッド、どう、嫌?」
 わたし、レッドのしっぽをモフモフします。
 レッド、体を揺らしながら、
「くすぐった〜い!」
「ほれ、嬉しがっておるではないか」
「本当だ……コンちゃんしっぽ触ったら怒るよね?」
「そうじゃの、わらわのしっぽに触れてよいのは店長くらいのものじゃ」
「普通、しっぽ触られたら嫌がるんじゃ?」
 わたしとコンちゃんでレッドのしっぽをモフモフ。
 レッド、キャッキャッ言って……喜んでますね、明らかに。
「まぁ、しっぽをつかまえれば少しは洗いやすい」
 コンちゃん、レッドの体のお湯を流してしまいます。
 今度はわたしが体を洗う番。
 そんなわたしをコンちゃんとレッドが湯船からじっと見ながら、
「ぼくも、モフモフする〜」
「ちょ、今、体洗ってるからナシです」
 ああ、レッドの魔手がわたしのしっぽに……って、コンちゃんが止めてくれました。
「これ、レッド、しっかり肩まで浸からぬか」
「は〜い」
「ゆっくり十数えるのじゃ」
「は〜い」
 コンちゃんの援護に感謝。
 って、そのコンちゃんがわたしのしっぽを手にして、
「ふむ……ポンのしっぽ」
「ちょ……コンちゃんなにを……」
「いや……昼、こやつが千代と一緒におやつを食べておったであろう」
「あ、うん、昼のこと」
「そうじゃ……レッドはこのしっぽにご執心じゃったろう」
「寝てたんじゃなかったんですか?」
「寝てなどおらん」
 コンちゃん、しっぽの感触を確かめながら、
「ふむ……確かに、なかなかのものじゃ」
「ちょ、コンちゃん、人のしっぽをモフモフしないでくださいっ!」
「よいではないか、減るものでもなかろうに」
「コンちゃんのしっぽも触るよ、モウ!」
「わらわのしっぽは店長だけじゃ」
「じゃ、わたしのも触っちゃダメ」
「ちょっとぐらい、よいではないか」
「わたしも触られるの、嫌なんですからモウ!」
「ちょっとくらい……ダメ?」
「ダメ」
「……わらわのしっぽを触ってよいので、おぬしのをモフモフさせるのじゃ」
「え……そこまでしてモフモフしたいの!」
「うむ……レッドが病みつきになるのも納得じゃ」
 コンちゃんダメって言ったのに、嬉しそうに触りまくりです。
 わ、わたしのしっぽって、なんかすごいのかもしれません。

 でも、わたし、しっぽはやっぱり許せません。
 レッドは朝起きてから、学校に行くまでずっとしっぽを握ってるんです。
 帰ってきても、わたしと一緒にいる間はずっとなんだから。
 ずっとしっぽをにぎられてたら、わたし、ストレス溜まりまくり!
 寝る時間になってわたしの怒り、爆発です。
「モウ、レッド、嫌いっ!」
「なんでー!」
「しっぽは嫌なんですっ!」
「そんなー!」
「もう、一緒にいてあげないんだからっ!」
「……」
 わたしとレッド、にらみあい。
 って、レッド、プイってそっぽ向くと、シロちゃんのところに行っちゃいました。
 シロちゃんの後ろに隠れて、
「ふん、ポン姉きらい」
「……」
「シロちゃがいるから、いいもん」
「……」
「シロちゃ、いこう」
 レッド、シロちゃんの手を引っ張って行っちゃいました。
 コンちゃんがやって来て、
「ポン、おぬしも大人気ないのう」
「じゃ、コンちゃん触らせたらいいのに、しっぽ」
「ぬう……わらわのは、神のしっぽゆえポンとは格が違うのじゃ」
「触られれるの嫌なだけだよね」
「……」
「ああ、レッドいなくなってスッとした〜」
「本気かの?」
「本気だよ、本当、本心」
「後で『レッドが触ってくれなくてさみしい』とか言って泣くのではないかの?」
「ふん、絶対そんな事、ないんだから」

 なんとな〜く数日が過ぎました。
「パトロールで寄ったであります」
 お客さんがいない時、シロちゃんが帰ってきました。
 せっかくだから休憩しちゃいましょう。
 店長さんもパン工房から出て来て、ミコちゃんもおやつを持って来てくれたよ。
 寝ていたコンちゃんも顔を上げて、
「ふむ、揃ったのう」
「コンちゃんおはよう」
「うむ、おはよう、ポン、座るのじゃ」
「言われなくても」
 わたしが座ると、初めてみんなが見つめてるのに気付きました。
 どうしたのかな?
「ポン、おぬしレッドと仲直りする気になったかの?」
「さぁ、最近顔を合わせるのはごはんの時くらい……」
「え……一緒にお風呂とか入ってないの?」
「ミコちゃんなにを……うん、入ってないね」
「一緒に絵本とか、してないでありますか?」
「うん……してないね……シロちゃんがやってない?」
 って、みんな深刻な顔でうつむいちゃいます。
 店長さんが表情をこわばらせて、
「最近のレッドがどうなってるか、知ってる?」
「え……普通じゃないんですか?」
「ポンちゃんは……何ともないの?」
「わたしは……店長さんから見てどこか変わりました?」
「……」
「え? え!」
 って、レッドが帰ってきました。
 千代ちゃんとたまおちゃんが一緒です。
 すぐにミコちゃんがメロンパンあげて、レッドは千代ちゃんと遊びに行っちゃいました。
「レッド、元気ですよ」
 たまおちゃんがやってきて、わたしの肩を揺すります。
「ポンちゃん、いいかげんレッドと仲直りしてください!」
「え! なんで!」
「レッド、今にも死んじゃいますよ!」
「遊びに行きましたよ?」
「ほら!」
 たまおちゃん、携帯電話出して画面見せてくれます。
 ああ、なんだか元気のないレッドが写ってますよ。
「ポンちゃんが相手しなくなってから、どんどんやつれてるよ」
「そ、そんな……わたし知らない」
「ポン、おぬし、わかったであろう」
「は? なにが?」
「おぬしがしっぽをさわらせればよいのじゃ!」
 ミコちゃんも顔を寄せてきて、
「レッドと仲直りしないと……ごはん抜き」
 で、出ました、兵糧攻め。
 って、みんなが窓の方見てます。
 レッドと千代ちゃんがこっちを見てますよ。
 コンちゃんが大号令。
「シロ、たまお、ポンを押さえるのじゃ」
「了解であります!」
「お姉さま、おまかせくださいっ!」
「ふ、二人ともなにするんですかっ!」
 ミコちゃんお店のドアを開けて、
「ほら、レッド、ポンちゃん仲直りしようって」
「しよう」ってお願いするのはレッドの方なのに!
 でも、店長さんもにらんでいます。
 それにわたし、シロちゃんとたまおちゃんにテーブルに押さえ込まれてます。
 間抜けにしっぽ、丸見えなの。
「ポン姉、なかなおりしてくれる?」
 間近で見るレッドの顔、確かにやつれまくり。
「なかなおり、してくれる?」
「はいはい、仲直りします、しますよ、死にそうな顔してモウ!」
「モフモフしていい?」
「……」
「嫌」って言いたいところです。
 でも、周囲の空気がそれ、許してくれません。
「はい、いいですよ、思う存分モフモフしてください」
「やたっ!」
 レッドの手が、わたしのしっぽモフモフしまくり。
「ふわわ、モフモ〜フ」
「ポンちゃんのしっぽ、気持ちいいよね」
 ちょっ……千代ちゃんまで触ってます。
 ああ、千代ちゃんのモフモフは野良の時からされてますよ、よく考えたら!
「モフモーフ!」
 わたしだけじゃないです、みんなびっくり。
 さっきまでひからびかけていたレッドが、どんどん元気になっていきます。
「モフモーフ……モフモ〜フ……うふふ〜」
 ああ、レッド、至福の表情。
illustration zpolice
「うむ、わらわも改めてモフモフじゃ」
「私も触ってみたいわね……」
「俺も久しぶりに……」
 コンちゃん・ミコちゃん・店長さんが触ります。
 みんな、ほんわかした顔になりました。
 わたしのしっぽで、世界平和が訪れるかもしれません。


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NCP5(2010)

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