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■  ポンと村おこし  第45話「お豆腐屋さんのぎっくり腰」         ■
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 今日のお仕事も終りました。
 わたしとコンちゃんでお風呂です。
「ほれ、わらわの背中を流すのを許す」
「なにが許すですか、わたしの背中も洗ってもらいます」
「ふむ……ポンが先輩ゆえ、しかたないかのう」
「しかたがない……言いますね、コンちゃん」
「いいから洗うのじゃ」
「はいはい」
 って、わたしがコンちゃんの背中を洗っている間、コンちゃんは前の方を洗う訳ですよ。
 むー、後ろから洗っているというのに、胸がチラチラ見え隠れ。
「ねー、コンちゃん」
「なんじゃ」
「なんでそんなに胸、大きいの?」
illustration zpolice
「ポン、またその話かの」
「だって……大きい」
「どうでもよい事ではないかの」
「むー、どうでもよいと!」
「うむ、どうでもよかろう」
 さて、ここで選手交代。
 わたしの背中をコンちゃんが洗ってくれます。
「どうでもよくない、なんで大きいの、大メロンパン級」
「まぁ、確かにおぬしよりは大きいかのう」
「でしょ」
「だからどうしたのじゃ、どら焼き級」
「どら焼き級……その通りだけど……」
「わらわの知識ではそーゆーのは貧乳というのじゃ」
「む、そんなのわたしだって知ってます」
 体、洗い終わっちゃいました。
 わたしとコンちゃん、一緒に湯船。
 むー、コンちゃんの胸、大きいですね。
 ちょっと触っちゃいましょう。
 むむ、フカフカなの。
「これ、触るでない」
「どうしたら、こうなるの」
「牛乳でも飲めばいいのじゃ」
「コンちゃん全然飲んでないよね」
「大人ゆえのう」
 今度は自分のを触ります。
 コンちゃんと比べると……小さい……クッ!

 今日の夕飯に冷奴が出ました。
 コンちゃんが約束して「おあげ」を貰うはずだったんだけど、ない時はお豆腐。
 こう、プルルンとして、ツルっと食べれて、わたし好き。
 そんなお豆腐を食べながら、
「ね、コンちゃん」
「なんじゃ、ポン」
 見ればコンちゃん、頬をポッと赤らめておとうふ食べてます。
 お酒はちょっとなら、いい匂いなんだけどね。
「コンちゃん、お豆腐食べたら、胸大きくならないかな?」
「わらわ、そんな伝承を知らんぞ」
「だってこんなにプルルンとしてるし」
 わたし、お豆腐を一口。
 それからじっとコンちゃん見ます。
「コンちゃんの胸の感じに似てます!」
「おぬしもしつこいのう〜」
「コンちゃんは大きいからそんな事が言えるんです」
「そんなもんかのう〜」
 あ、コンちゃん、わたしの二の腕をつかまえました。
 何度かモミモミして、
「ポンの腕、プニプニしておる、豆腐と同じじゃ」
「!!」
「胸でなく、腕がプニプニじゃ」
「!!」
 あ、みんながわたしを見て、クスクス笑ってます。
 もう、本当に気にしてるんだから!
 むー、こう、みんなを見回すと、やっぱりわたしの胸が一番小さいような気がします。
 このままじゃ、店長さん争奪戦脱落必至!
 こーゆー事を相談するのは誰がいいかな……
 コンちゃんは……不真面目なのでダメ。
 どうせまともに請け合いませんよ。
 ミコちゃんも笑ってスルーされそう。
 シロちゃんは……無頓着そうでやっぱりダメっぽい。
 たまおちゃん……そうです、普通に女の子です。
 きっとこの山の神社に来るまでに、いろいろ知識豊富なはず!
「ね、たまおちゃん、胸、大きくするにはどうしたら!」
 って、たまおちゃんの箸が止まりました。
 わたしをじっと見つめて、
「私……ポンちゃんにはイマイチ興味ないし」
 って、コンちゃんやミコちゃんに熱い視線送ってますよ。
「なんでわたしじゃダメなんですか!」
「若い娘はちょっと……ポンちゃんパッと見中学生クラス、どら焼き級」
「う……その通りです」
「お姉さま達と同じくらいになったら、胸も大きくなるかと……」
「そ、そうかな!」
 わたし、たまおちゃんを捕まえて、
「保証する? 命賭ける?」
「ぽ、ポンちゃん……」
 わたしを押し退けようとして腕をつかむたまおちゃん。
 目をパチクリさせて、真剣な目で今度はわたしの胸を触ります。
「どう、たまおちゃん、保証外?」
「いや……こう……その……」
 たまおちゃんの、いつにないシリアス顔に静まる食卓。
 頷くたまおちゃん、ポツリと、
「胸と腕、同じくらいにプニプニ」
 なんかすごい嫌な気持ちになっちゃいました。

 老人ホームのおやつ配達の帰り。
 レッドと学校で合流して、お店に向かいます。
 途中でお豆腐屋さんに寄って分けてもらうんで、お鍋持参なの。
「モフモ〜フ」
「ねぇ、レッド」
「なになに〜」
「しっぽ、やめてください」
「えー、きもちいいのに」
「わたしが嫌なんです」
 本当にモウ、この仔キツネはしっぽスキー。
「しっぽだめ?」
「ダメです、手を繋ぐんです」
「えー!」
「コンちゃんとデートだと手を繋いでるでしょ」
「ちぇっ!」
 なにが「ちぇっ!」ですか。
 手と手になったけど、なんだかピョンピョンしてます。
「どうしたんです?」
「ちょっとちょっとー!」
「うん?」
 レッド、わたしの肩に飛び掛りながら……二の腕をしっかとつかみます。
「どうしたの?」
「これがプニプニ」
「!!」
「プニプニ……うふふ……プニプニ」
 もう、チョップですチョップ。
 レッド、わたしの二の腕の感触にすごい嬉しそう。
「しんきょうち、はっけんです」
 もう、今度一緒にお風呂入ったら、頭からお湯掛けて泣かせちゃうんだから。
 じゃれあっていたら、トラックがやってきました。
 わたし達の手前で停まりましたよ。
「おう、パン屋の姉ちゃんじゃねぇか」
「あ、現場監督さん、どうしたんですか?」
「いや、豆腐屋のじっちゃんに配達の帰りなんだ」
「そうなんですか、わたし達は今から行くところです」
「そうか、あそこの豆腐最高だからな、じゃ!」
「うちにも来てください!」
「昼はいつも行ってるんだけどな〜」
 トラック行っちゃいました。
 昼はいつも来てるそうです……わたしが配達であけてるだけかも。
 すぐにお豆腐屋さん見えてきます。
「こんにちわ〜」
「ああ、いらっしゃい、ちょっと!」
「どうしたんです? 血相変えて?」
 なんだかおばあちゃん、ちょっと焦った感じ。
「うん、じいさんが腰をやっちゃってね」
「腰? やっちゃった?」
「うん……さっき大豆を配達してもらったのはよかったんだけど、運ぼうとしたらね」
 って、おじいちゃん、お布団で横になって苦笑いしてます。
「まだ大分残っててね……中に運ばないと……」
 ああ、本当です、店先にたくさん袋が積んであります。
 おばあちゃん、お鍋にお豆腐入れてくれてから、
「私にはちょっとね……」
「ふうん……これ……こっちに?」
「うん、そう、こっちに」
 わたし、お豆腐の入った鍋をレッドに渡して、
「じゃ、わたしが運びます……レッドはお鍋を持って先に帰ってください、これがないと
夕飯がピンチになっちゃうから」
「は〜い」
「たくさんありますね、でも、頑張りましょう!」
 わたし、腕まくりして袋を運びます。
 大きい!
 つかみにくい!
 重たい!
 や、やっと一つ運び込みました。
 まだまだ沢山あります。
「あんた……大丈夫かね?」
「ま、まかせてください……うふふ……うふふ〜」
「ほ、本当に大丈夫なんだろうね」
「お、終らない仕事はないんですっ!」
 くっ……乗りかかった船ってヤツです。
 さ、最後までやり遂げるんだからモウ!

 は、運びに運びました。
 い、いよいよ最後の一袋。
「おーい、ポン」
「!!」
「ポン、頑張っておるようじゃな」
「コンちゃん、どうして!」
「レッドから話を聞いたのじゃ」
「ふわわ……これで終わりです」
「ふむ、こんなにも運んだのか、なかなかやるのう」
「た、タヌキの意地です」
「うむ……では、最後の一つは助太刀じゃ」
 って、コンちゃんが指を鳴らすと、大豆の袋がフワフワ宙に浮き上がりました。
 そのままフヨフヨと飛んで、中に行っちゃいます。
「ちょ……コンちゃん反則!」
「まぁ、わらわの術をもってすれば、お茶の子じゃ」
 わーん、これなら最初からコンちゃん呼べばよかったです。

 超肉体労働の後のお風呂は最高です。
「今日はすごい疲れたよ、充実感最高だけど」
「うむ、わらわもポンを見直した」
「でしょ、わたしもやる時はやるんです」
 湯船に浸かっているコンちゃん、縁につかまってわたしとレッドを見てます。
 わたし……ふふ、レッドの髪を洗ってるところなの。
 泡まみれのレッドに、ザーっとお湯掛けるんです。
「わーん、やさしくしてー!」
「男の子でしょ、我慢です我慢」
「わーん!」
 ふふ……しっぽのお返しなんです。
 でも、泣かしてばっかじゃかわいそうなので、最後に抱っこしてあげるの。
「ほら〜、男の子は泣かないの」
「なきたいときもあるのー!」
「お湯掛かったくらいで泣きますかモウ!」
「ポン姉、わざとしてます」
 ギクッ……レッドの言う通り。
 もしミコちゃんに告げ口されたらお外でお休みかもしれません。
 でも、レッド、なんだかじっとわたしを見つめてます。
 どうしたのかな?
「ねぇ……ポン姉……」
「どうしたの、レッド?」
「うでがすごいことに……プニプニしてない」
「!!」
 レッド、真剣な顔でわたしの二の腕触ってます。
 コンちゃんも手を伸ばして触りながら、
「のう、ポン、おぬし……」
「な、なに……コンちゃん……」
「なかなか良い体をしておるのう」
「!!」
 コンちゃん、今度はわたしの胸を触ります。
「胸、薄くなっておらぬか?」
「!!」
「胸の分が、腕に行っておらぬか……それもカッチカチじゃ」
「う……」
「まるで男のようじゃ」
 それを聞いてレッドが、
「じゃ、ポン兄とよびますか?」
 ダメージ大きすぎです。
 わたし、このまま男になっちゃうんでしょうか!
 わーん!


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NCP5(2010)

illustration zpolice
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