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■  ポンと村おこし  第41話「ミコちゃんの給食当番」           ■
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 朝ごはんも終りました。
「任務に行くであります」
「私も神社に……」
 シロちゃんたまおちゃん出勤です。
「はい、ポンちゃんの配達とレッドのお弁当よ」
 朝イチの配達は神社です。
 ついでにレッドを学校近くまで連れて行くの。
 わたしの配達は大きな手提げで、レッドのお弁当は幼稚園カバン。
「ねぇ、ミコちゃん」
「なに、ポンちゃん?」
「わたし、昼に学校に配達に行くけど、学校、給食あるよね」
「そうね、私も配達に行った事あるわよ」
「レッドのカバンの中はお弁当」
「そうよ」
「給食あるのでは?」
「村長さんから言われたの、レッド、お昼までもたないんだって」
「帰ってきたら、おやつパクパク食べてるもんね」
「子供だから」
「レッドのお弁当ってどんなのです?」
「おにぎりよ、カツブシとシャケ、梅干はダメみたい」
「おいしそう……わたしのお弁当は?」
 って、ミコちゃんチョップが炸裂です。
 ちょっとした冗談だったのに。
 わたしとレッドが出発しようとしたら村長さんが来ました。
 熟女です、上品な感じである意味脅威。
「あの……ミコ……ちゃんはいますか?」
「ミコちゃ〜ん、村長さんが来てるよ〜」
 店長さんじゃなくてミコちゃんの用事でよかった。
 村長さんとミコちゃんの話が気になるところですが、レッドの学校もあるので出発です。
「ねぇねぇ、レッド」
「なに、ポン姉〜」
「おにぎり、おいしい?」
「うん、おいしいよ」
 わたし、レッドのカバン取り上げちゃいます。
「ふふふ、お弁当いただき〜」
「あー!」
「おにぎり、いただきま〜す」
「ふえ……うえ……うわーん!」
 ああ、レッド大泣きです、冗談なのに。
「はいはい、ごめんゴメン」
「ポン姉のいじわる」
「ごめんってば」
「ミコ姉にいうもん」
 そ、それはやめて〜
 でもでも、おにぎりすごく美味しそう。
 ミコちゃんわたしにも作ってくれないかなぁ。

 配達から戻ってみたら、なんだかミコちゃん忙しそうにしています。
「どうしたの、ミコちゃん?」
「あ、ポンちゃんおかえりなさい……私、すぐに出かけるから」
「お買い物?」
「ううん、村長さんに言われて、給食当番に行くから」
「さっきのは、その事だったの?」
「うん、村長さん、なんだか急用なんだって」
「ミコちゃん、なんだか楽しそう……面倒くさくないの?」
「なんで? 楽しくない?」
「お料理が好きなの?」
「お料理が好き……それもあるけど……子供が好きかな?」
「ふーん……店長さんはわたしのものなんだから!」
「ふふ……レッドがいるから……そうね……」
「なになに?」
「山の頂上に社があったでしょ」
「うん、ミコちゃんの社」
「ずーっと昔、私が人柱になったのは話したわよね?」
「うん、知ってるよ」
「人柱になって、こう、ずっと退屈だったの」
「なんかそんな事、言ってたね、わたし帰るの阻止してたし」
「ふふ……あそこ、昔は道もなかったのよ」
「ずっと神さまになって、あそこにいたんだよね」
「うん……でも、神さまになって毎日誰か来てくれたりしたわけじゃないの」
「……」
「ポンちゃん歩いて来たからわかると思うけど、大変でしょ」
「うん、あそこ、近くに見えるけど結構しんどいよ」
「昔は道も今みたいじゃなかったから、もっと大変だったのよ」
「それじゃ……人も来ないかも」
「すごく退屈で……」
「だろうね」
「でも、あんな社にお客さんが来てくれるようになったの」
「え……今、大変だったって言ってなかった?」
「うん……人は年に一度くらいにね……人じゃなくてタヌキさん」
「た、タヌキさん!」
「うん、山の動物でタヌキさんがよく来てくれたの」
「そ、そうなんだ……それは初めて聞いたよ」
「ふふ……タヌキさん達やって来て、私とよく、お話してくれたわ」
 なんだかミコちゃん、すごい楽しそうに話してくれます。、
「だからポンちゃんが来たときは、すごく嬉しかったの」
 ミコちゃんニコニコして、行っちゃいました。
 わたしがあの日社に行ったの、運命だったのかもしれませんね。

 さて、お客さんもはけちゃいました。
 観光バスさまさまってもんです。
「これ、ポン、昼ではないかの」
「そうだね、そろそろ昼ごはん……」
 わたし、コンちゃんに返事をしてから固まっちゃいます。
 ごはん作るのはミコちゃん。
 そのミコちゃんは給食作るのに学校に行ってますよ。
「これ、ポン、昼は!」
「コンちゃん、ミコちゃん学校に行ってていないんだけど」
「なんじゃと!」
 時計を見たら給食の時間は終っていそうです。
 でもでも、後片付けとかいろいろあるのかもしれません。
「ポン、お昼!」
「わ、わたしに言われても!」
 って、店長さんも奥から出てきました。
「ミコちゃんがメモと一緒に置いてったよ」
「店長さんそれは?」
「キツネうどん」
「??」
「お湯を入れて五分待つの」
「おもしろそう!」
 って、わたしそれは初めてです。
 でも、コンちゃんご機嫌斜め。
「ミコめ、神のわらわに即席かの」
 テーブルに並べられたキツネうどん。
 上の紙をはぐったらもうできているみたい。
「きゃーん、お・あ・げ!」
 コンちゃん、文句言いながら一番最初に手が出ちゃってます。
 わたしもいい匂いにつられて一口。
「ナニコレー、すごくおいしいよ!」
 店長さんも笑いながら、
「インスタント、たまに食べるとおいしいよね〜」

 翌日もミコちゃん行っちゃいました。
 お昼を前に、お客さんもいないので、
「ねぇ、コンちゃん、今日もミコちゃん給食当番だよ」
「なに……食事はどうなっておるのじゃ」
「さ、さぁ……あ、店長さん!」
「なに、ポンちゃん?」
「今日もお昼は……ミコちゃんいないから」
「あ、聞いてるよ、残り物のパンだから」
 店長さん、持ってたパンをテーブルに置きます。
「えー!」
 もう、わたしもコンちゃんもブーイングです。
「なに、二人とも、俺のパンに文句あるの?」
「パンはおやつに食べるから……」
「そうじゃそうじゃ」
「店長さんはパンでもいいんですか?」
「う……パン屋やってるだけに、ちょっとキツイかも」
「わたし、配達って言って学校行っちゃおうかな〜」
「やめなよ……」
「わたし、ごはんがいいーっ!」
「わらわもじゃ」
「きっと今頃レッドはおいしい給食食べてるんですよ」
 わたし、思い出して冷蔵庫に貼ってある献立表持ってきます。
「これによると、昨日は肉じゃがです……じゅるる」
 みんなも頷きます。
「今日はカレーになってます……じゅるる」
 みんなの頭上で「カレー食べているレッドの図」が浮かんでいます。
「ミコちゃんレッドにお弁当作っているのに!」
「ミコのヤツめ、わらわ達の事など考えておらんのじゃ!」
「ああ、そう言えばおにぎり、たまおちゃんやシロちゃんに作ってたなぁ」
「わーん、わたしもおにぎり、食べたーい!」
「これ、店長、何か作れぬのか、ミコが来るまでは店長が……」
「そりゃ、作れない事はないけど、食材もミコちゃんまかせで俺が勝手すると夕飯がどう
なるか……」
「はわわ……夕飯がしぼむの嫌ですね」
「今はこのパンでしのぐしかないんじゃないかな」
 店長さんの頭に裸電球。
 あるパンをわたし達にくれました。
「なに、店長さん?」
「ふふ、ちょっとでも雰囲気味わえるよ」
「??」
 店長さんのくれたの、揚げたパンです。
 わたしとコンちゃん、早速食べます。
「あ、これ、カレーパンですね」
 みんなで食べるカレーパン。
 でも、余計に「カレー」が食べたくなっちゃいました。

「ただいま〜」
 レッドご帰還、ミコちゃんも一緒だよ。
「ミコちゃんひどい、わたし達のお昼なかった!」
「昨日のパンが結構残っていたから……ダメだった?」
「おにぎりとか、作っててくれればいいのに!」
「ふふ……夕飯今から作るわね」
「む!」
 わたしとコンちゃん、クンクンします。
 カレーの匂いなの。
 わたしとコンちゃん、おやつのメロンパン食べてるレッドを捕まえます。
「わわわ、なになにー!」
「レッド、じっとしてて!」
「ころさないでー!」
「いいから、じっとしてて!」
 レッド、メロンパン持ったまま固まっちゃいました。
 わたしとコンちゃん、レッドの髪をクンクンしまくりです。
「くっ……レッド、給食はなんでしたか!」
「カレーライス」
「レッド……おぬしカレーは好きか、何杯食べたか!」
「すきすきー、おかわりした」
 わたし達、レッドを置いて台所に直行です。
 二人でミコちゃん囲んで、
「ミコちゃん、夕飯はカレーにして!」
「そうじゃ、わらわも食べたいのじゃ!」
「でも……レッドちゃんが昼も食べてるし……」
 二人してミコちゃん揺すりまくりです。
「今夜はカレー!」
「はいはい」

 今日もお客さん、しっかりきてくれますように。
 でもでも、朝のパン屋さんはお客さんいません。
 まぁ、朝一番はしかたないですね。
「これ、ポン、ちょっとよいか」
 コンちゃんが呼んでいます。
 なにかな?
「ポン、ミコはおるのかの?」
「?」
「ミコはおるのか?」
「うん、ミコちゃん台所じゃない?」
「そうか、それはよかった」
「どうしたの?」
「ポン、おぬし、昨日の事を忘れたかの?」
「昨日……カレーおいしかったね」
「おぬしは……何故カレーがおいしかったと思うのじゃ」
「それは……お腹空いてたから……」
「そうじゃ、今日もミコが給食当番にとられてはたまらんのじゃ」
「そ、そうだね……ミコちゃんがいないとたまりません」
「じゃろ……しかし……」
 わたしとコンちゃん、一緒になってパン工房を覗き込みます。
 店長さんがパン生地こねているのが見えますね。
「こう、昔は店長の食事でも満足じゃったのに……」
「わたしも……ミコちゃんが来るまでは、店長さんのごはんでよかったのに……」
「わらわ、ミコの呪縛にとらわれてしまったのかのう」
「呪縛……兵糧攻めとか言わない?」
「むう……確かに兵糧攻めかもしれん」
 って、パン屋さんのドアが開いて、カウベルがカラカラ鳴りました。
 今日一番のお客さん……って、熟女な村長さん。
 わたしとコンちゃんに衝撃が走ります。
「あの、ミコ……ちゃんはいますか?」
「ミコちゃんはいません!」
「え……」
「ミコちゃんはいないんです!」
 わたし、必死に否定しまくり。
 コンちゃんも髪がうねって呪いのオーラを背負っています。
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「村長、ミコはおらぬ、帰るのじゃ」
「……」
 そうです、またミコちゃんを給食当番にとられたら、たまったものじゃありません。
 わたしとコンちゃんで熟女村長にらみまくり。
「コラ!」
 って、現れたミコちゃんからチョップ食らっちゃいました、イテテ。
「まったく、お客さんに何してるの!」
「だ、だって〜」
「なに、ポンちゃん」
「だって、またミコちゃんとられたら、わたし達のお昼が!」
 わたしの言葉にコンちゃんもブンブン頷きます。
 って、ミコちゃんと村長さん、クスクス笑ってますよ。
「な、なんで笑ってるんですかっ!」
「そうじゃそうじゃ!」
「あ、あら、ごめんなさい……今日はお礼に来たのよ」
 ああ、ミコちゃんとられなくてよかった〜!




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NCP5(2010)

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