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■  ポンと村おこし  第24話「店長さん風邪ひいちゃった」         ■
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「きゃー! 店長さんっ!」
 わたし、びっくりしました。
 店長さんが倒れちゃったんです。
「コンちゃん! ミコちゃん!」
 わたし、倒れちゃった店長さんを抱えて右往左復。
 すぐに二人もやってきて、
「どうしたのじゃ、ポン」
「店長さんが倒れたんです」
「おぬしが余計な事をしたのではないかの?」
「そんな事してないもんっ!」
 わたしとコンちゃんが問答している間、ミコちゃんは店長さんの額を触りながら、
「熱がありますね……ポンちゃんお布団敷いてください」
「ミコちゃんは?」
「わたしはお薬探してきます」
 わたし、店長さんを抱えて部屋に向かいます。
 コンちゃんも後から着いて来ながら、
「店長はどうして倒れていたのじゃ」
「し、知らないよ」
「おぬしが見つけたのじゃろうが」
「今日はわたし、配達係りで、パン工房に行ったら店長さんバッタリ」
「おぬし、本当になにもやってないのであろうな?」
「わたし、今日はずっとレジにいたよ」
「うむ、そうじゃったな」
 部屋にお布団敷いて店長さんを寝かせます。
 店長さん、顔が真っ赤で息も苦しそう。
「はわわ、店長さん死んじゃうのかな?」
 と、ミコちゃんが来ました。
 でも、表情は暗いです。
「ミコちゃんっ!」
「風邪薬なかったから……どうしましょう」
「み、ミコちゃんには『ゴットなんとか』があるじゃないですか!」
「ご、ゴットなんとか……治療の術ですね」
「そうそう、チチンプイプイみたいなの」
「治癒の術はあるにはあるんです、チチンプイプイ」
「それ、やってやって!」
 ミコちゃん考え込んでます。
 考えるところじゃないのにモウ。
 コンちゃんが店長さんの頬をつっついてます。
 もう、いつもふざけてばっかりなんだから!
「じゃ、ポンちゃん、試しに術をつかってみるわね」
「早くやってください!」
 ミコちゃん弓を引く仕草。
「ゴットアロー!」
 治癒の術をやってほしかったんだけどソレですか。
 発射される光の矢。
 わたしや店長さんを素通り。
 コンちゃんに命中して爆発しました。
「ね、私の術はポンちゃんと店長さんには通じないから」
「そ、そうでした」
 ミコちゃんの術は、この家ではコンちゃんにしか通じません。
 わたしとミコちゃん、目が合います。
 そしてゴットアローでキツネ色に焼けちゃったコンちゃんを見て、
「ね、コンちゃんコンちゃん!」
「な、なんじゃポン……わらわは重傷なのじゃ」
「コンちゃんの術なら、わたしや店長さんにも当るよ」
 途端にくすぶっていたコンちゃん復活。
 寝ている店長さんを見ながら、
「ふむ、わらわの術なら店長に効くが……」
 コンちゃん真剣な目になりました。
 でも、いきなり愛想笑いをして、
「すまぬ、無理じゃ」
「えー!」
「ポン、おぬし、わらわの術を知っておろう」
「?」
「岩やダンプをひとっとびじゃ」
「そうそう、あとは必殺心臓マッサージ」
「そう、それもある」
「だから早く!」
 コンちゃん黙って、じっとわたしを見てます。
「ねー、コンちゃん、早くー!」
「ポン、おぬしも足りぬのう」
「なんでー!」
「わらわの術は攻撃系のみじゃ」
 あう、コンちゃんらしいです。
 本当にお稲荷さまなのかなぁ。
 お店の先行きもかなり不安です。
「ポンちゃん、ともかく配達に行って」
「え……でも店長さんが!」
「店長さんはお薬探すとかするから、ともかくお仕事」
 本当は店長さんの近くにいたいんだけど、わたしがいても役に立ちそうにないし、とも
かくお仕事やりましょう。

 学校では千代ちゃんがお出迎え。
「ポンちゃんどうも」
「千代ちゃん、パン持って来ました〜」
「ポンちゃん……なんだか元気がなくない?」
「う……わかりますか?」
「なんとな〜く」
「店長さんが倒れちゃって」
「え……まさかこれ、ポンちゃんが作ったの?」
「まさか……店長さん作ってから倒れたから」
「重い……病気なの?」
「う〜ん、ミコちゃん風邪って言ってました」
「お薬飲んだらいいのに」
「それがないんです」
「学校にあるけど」
「え!」
 いきなり解決ですか。
 千代ちゃんわたしを連れて保健室です。
「今日は保健の先生お休みだから……薬はこれ」
「ふわ……これで店長さんよくなるんですね」
 わたし、安心したら力が抜けちゃいました。
「ポンちゃん……店長さんが好きなの?」
「わたしは店長さんと結婚するのが夢です」
「すごい心配してるから……本気なんだ」
「命の恩人なんだもん」
 千代ちゃん今度は机の引出しをごそごそしてます。
 さっきの風邪薬は茶色い瓶だったけど、今度は六粒一まとめの銀色のヤツ。
「では、恋に燃えるポンちゃんに私からプレゼント」
「千代ちゃんから……なんの薬?」
「ふふふ……ホレ薬」
「ほ、ホレ薬っ!」
 千代ちゃん自慢気に語ります。
「これを好きになって欲しい人に飲んでもらって、自分も飲みます」
「はいはい」
「そしてポンちゃんは告白するんです」
「こここ告白!」
「できない?」
 千代ちゃんじっと見つめてきます。
 告白……こっぱずかしい言葉。
 でもでも、よく考えたらしょっちゅう「結婚して」って言ってるような気がします。
 いつも店長さん肩すかし状態だけど。
「好きとか結婚してとか言えばいいんですよね」
「ポンちゃん好きと結婚じゃ、いきなり飛び過ぎだけど……そんな感じ」
「わたし、頑張って店長さんにホレ薬を飲ませます!」
「その前に、風邪薬を飲ませてね」

「ポンちゃんを配達に出してよかったわ」
 風邪薬のおかげで、店長さんは穏やかな寝顔です。
 わたし、店長さんの汗を拭いたりしながら、
「千代ちゃんに相談したら、お薬くれました」
 店長さんは赤くなくなったけど、まだ体はホクホクしてるの。
「そう……じゃ、今日の店長さんの看病はポンちゃんに頼みましょう」
「な、なんでじゃ! ポンはエロポンなのじゃぞ!」
 コンちゃん猛抗議です。
「あのタヌキ娘は純情そうな顔してエロエロなのじゃ」
 ミコちゃんが指を鳴らすと、どこからともなく雷が落ちてコンちゃん黒焦げ。
「ほら、コンちゃんはお稲荷さまなんだから、お店で頑張るの!」
「店長が化けタヌキの餌食に〜」
 二人は行っちゃいました。
 わたし、店長さんをしっかり看病……って、別にする事ないです。
 汗もたまに拭けばいいだけだし……
 氷嚢もすぐに溶けるわけじゃないし……
 店長さんは寝ているからお話もできないし……
「退屈……」
 店長さんの寝顔を見ていると幸せだったけど、だんだん眠たくなってきました。
 そんなわたしの頭にエロポン記憶がよみがえります。
 好きな男の人が病気でダウンしたら、添い寝をするのがお決まりパターン。
 わたし、店長さんのお布団に一緒に入っちゃいます。
 本当は裸で入ると一番いいルートに突入なんですが、こっぱずかしいのでそれはナシ。
 店長さんヌクヌクですよ。
 わたし、ずっと心配しててヘトヘトだったから、すぐに眠っちゃいました。

「このエロポンっ!」
 コンちゃんの罵声が聞こえます。
 その「エロポン」はやめてください。
「ポ、ポンちゃん信じていたのに……」
 ミコちゃんの唖然とした声も聞こえます。
 なんだろう……わたしのまぶたがゆっくり開きます。
 目の前には今にも噛み付きそうなコンちゃんと、目を丸くしたミコちゃんがいます。
 コンちゃんはあんまり騒いでいたので、ミコちゃんの術で黒焦げ沈黙。
 ミコちゃんが怒った顔を近付けてきて、
「ポンちゃん……私、まだ早いと思うんだけど……」
「え?」
 そう、店長さんと一緒に寝てるんでした。
 わたしがびっくりして起きると、店長さんも目を覚まします。
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「む……おはよう……って、なんで寝てるんだ」
 店長さん目をこすりながら……でも、状況が読めたみたい。
 目を白黒させながらわたしとミコちゃん見てます。
「ポ、ポンちゃんが夜這い!」
「わわわわたし看病で一緒に……」
 店長さんとミコちゃん、一緒になってドン引きです。
 こ、このままじゃわたし悪者になっちゃう。
 な、なにか手は……そうでした、ホレ薬があります。
 あれを飲ませて、店長さんと結婚してしまえば、もうこわいものナシなの。
 早速行動行動。
「店長さん! 風邪薬だけではダメです!」
「な、なにをいきなり!」
「この栄養剤を飲んだら、ばっちりです!」
 栄養剤なんてウソ、さらっと出ました。
 コンちゃんと一緒にいるのが長いからかな。
 一瞬ミコちゃんがブロックするかと思ったけど、
「そうね、栄養剤を飲めば完璧かも」
 思わぬ援護射撃。
 店長さんもそんな言葉にわたしの出した錠剤を手にします。
 開けて初めてにおったんだけど、なんだか美味しそうなにおいのお薬。
 碁石くらいの白いお薬、店長さん飲みました。
 すぐにわたしも飲んじゃいます。
「店長さん、好き、結婚して!」
「!!」
「結婚してくれないと、死んじゃうんだから!」
「ポ、ポンちゃんなにをいきなり」
 じっと店長さんを見つめます。
 そろそろ効いてこないかな?
 まだまだかな?
 見た目に変化はないのかな?
「店長さん……結婚する気になりましたか?」
「いつも結婚結婚言ってるけど、どーゆー事かな?」
 って、わたしと店長さんが話している横でミコちゃんとコンちゃんがホレ薬のにおいを
かいで、飲んじゃいました。
「わーん、なんでコンちゃん達が飲むのー!」
 ミコちゃん口元を隠してモグモグしてます。
「い、いや、おいしそうだったし」
 コンちゃんガリガリいわせて噛み砕いてます。
「これはお菓子じゃ、お菓子」
 店長さんもモゴモゴしながら言います。
「うん、これ、ヨーグルト味のお菓子だよ」
「え……そんな〜」
「……」
「ホレ薬って言われたから……」
 痛い視線を感じます。
 途中で言うのを止めて口を隠したけど、ダメだったみたい。
 三人とも怒りのオーラを背負ってわたしを見てます。
 なんだか目が赤く光って見えるのはわたしだけ?
「ポーンーちゃーん!」
「ひ、ひえっ、店長さんこわいっ!」
「今夜はお外でお休みね」
「えー!」


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