■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■  ポンと村おこし  オマケ「大きなダンボールと小さなダンボール」     ■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

「大きなつづらと小さなつづらの話なんかどうかの?」
 わたし、言われたから、お店の本を読んで勉強。
 そう、大きなつづらと小さなつづら、店長さんならきっと小さなつづらを選ぶ筈です。
 でも、問題のつづらを見つけてこないといけないなぁ。
「コンちゃんコンちゃん」
「なんじゃ、ポン」
「つづらはどこにありますか?」
「ぽ、ポン、おぬしアレをやるのか?」
「もちろんです、勉強しましたから……」
「ほ、本気か?」
「店長さんはきっと小さなつづらを選びます、しっかりしてるから」
 あ、コンちゃんの顔、笑ってます。
 肩を震わせながらコンちゃんは、
「で、で、で……つづらを二つ準備せいと?」
「どこにあるんでしょう?」
「まぁ、つづらはなくとも、ほれ、これでどうじゃ」
 コンちゃん一度パン工房に行って戻ってきます。
 手にはダンボールです。
 組み立てると箱が二つできました。
「うわ、これでいいですね」
「うむ、一つは大きくて、一つは小さいから、いいじゃろう」
「じゃ、コンちゃん大きい方に入って」
「……」
「わたし、小さい方」
「……」
 コンちゃんムスっとして、大きなダンボールに入ります。
 わたしは店長さんが選ぶ小さい方に入っちゃえ。
「ポン」
「なに、コンちゃん」
「なんでおぬしが小さいダンボールなのじゃ?」
「だって大きなつづらには、おそろしいものが入ってるんです」
 あ、途端にコンちゃんの髪がうねります。
「ほら、やっぱりこわいです」
「ぬう……」
 コンちゃんが引っ込んだところで、タイミングよく店長さん登場。
「店長さん店長さん!」
「あ、なにやってんの二人とも?」
「店長さん、日ごろお世話になっているお礼です」
「?」
「大きなつづらと小さなつづら、どっちにしますか?」
「つづらって……ダンボールじゃん」
 店長さんつぶやいてから、途端に表情が険しくなります。
 うわ、こわい目でわたしを見つめてきますよ。
 と、とりあえず目を逸らしちゃえ。
 あ、コンちゃん勝手にダンボールから出ちゃってます。
 でも、いいや、店長さんは小さいつづらを選ぶに決まってるんだから。
「さあ、選んでください!」
 ここは強気に限ります。
 店長さん腕組んで渋い顔。
 コンちゃんも並んでこっちを見てます。
 あれ、店長さんとコンちゃん、なんだかうなずいて……
「え?」
 店長さんとコンちゃん、わたしのダンボールを抱えてお店の外。
「店長さん何を……」
「俺、今、小さいつづらを選んだの」
「ほれ、ポン、よかったのう、思った通りで」
 むー、二人の口ぶりは怒ってる。
 そしてダンボールinわたしは店先に置かれました。
 店長さんどこからともなくマジックを出しましたよ。
 わたしの入っているダンボールになにやら書いてます。
 コンちゃん笑ってる……なに書いてるんですか?
「!」
 ダンボールには「拾って下さい」の文字。
illustration はづきゆう
 わ、わたし、捨てられちゃったんです!
「ぷぷぷ、ポンもいよいよ捨てタヌキ」
「ちょっと頭冷やして」
 ぐっすん、作戦失敗です。


pmh008p for web(pmh008p.htm)
DCO5(2008)(adj/2009)
illustration はづきゆう(MK-HOUSE)
(C)2008,2009 KAS/SHK 
(C)2009 はづきゆう