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■  ポンと村おこし  第35話「レッドは眼鏡娘がお好き」          ■
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 朝食はシロちゃんも加わってにぎやかです。
 でも、店長さんはそんなシロちゃんを見てどんよりしてます。
 いや、レッドにやられた慰謝料で公務執行妨害をチャラ……
 慰謝料とは居候。
「店長さん、大丈夫です?」
「ポンちゃんには大丈夫に見える?」
「怒ってますね?」
「わかってるじゃん」
 店長さんの不機嫌顔、みんなも知ってるはずです。
 でも、みんな知らん顔でごはんを食べてますよ。
 そんなみんなの態度に、店長さんの冷たい目はわたしに向いちゃう。
 な、なんで!
「ポンちゃんが原因な事が、多いような気がするんだよな〜」
「そ、そんな……レッドの輪ゴム銃は店長さんが教えたんです」
「輪ゴム銃はそうだけど、レッドが人間になったのはポンちゃんが原因……」
「う……」
 こーゆー時はコレです。
「店長さんは器が小さいです」
「!!」
「漢とは、少々の事では動じないものです」
「ポンちゃん、コンちゃん、ミコちゃん、レッド、シロちゃん……少々と?」
「う……動じないものです」
「……」
「そ、それにっ!」
「それに?」
「ほら、レッド以外は女の子ばっかりです、花園です、店長さんひゅーひゅー!」
「じゃ、俺、コンちゃんと仲良くしちゃおうかな〜」
「なんでわたしじゃないんですかーっ!」
 店長さん笑ってます。
 機嫌が戻ってくれてよかったけど、今のところはわたしを指名するべきです。
 いっつもわたしの事、ちゃかしてばっかりなんだからモウ!

 ミコちゃんとレッドがどら焼きに模様をいれています。
 神社に持って行くどら焼きでナマズの焼印がはいっているの。
「はい、完成、ポンちゃん配達に行ってきて」
「はいは〜い」
 わたしがどら焼きを受け取って行こうとしたら、レッドがしっぽをつかみます。
「レッド、しっぽをつかむのはやめて〜」
「ぼくもいく〜」
 わたし、ミコちゃんを見たら頷いています。
 ちょっと考えてから、
「遠いから、最後まで歩ける?」
「おとこをあげます」
 そんなわけで、レッドと一緒に配達。
 レッドが階段を上がるのは、なんだか登山みたいな雰囲気だったから、途中からおんぶ
してあげました。
「たまおちゃ〜ん、どら焼き持ってきたよ〜」
「はいは〜い」
 社務所で声をかけると、たまおちゃんが出てきました。
 たまおちゃんが現れた瞬間、わたしの肩をレッドがギュってします。
「ちょ、レッド、痛いですよ〜」
「は、は、はわわ……」
「はわわ?」
「きれーなおねーさん!」
「はぁ?」
 すごい興奮しているみたいだから、レッドをたまおちゃんにパス。
 レッド、コンちゃんが好きだって思っていたけど、たまおちゃんも好みなんでしょうか?
「レッド、レッド、たまおちゃんのどこがいいの?」
 わたしの意見としては、コンちゃん・ミコちゃんは確かに美人さん。
 たまおちゃんはかわいいほうに分類しときましょう。
「めめめめがねなところ!」
 あー、そこですか、眼鏡フェチなんですね、お子様のくせに。
「この子は?」
 たまおちゃん、抱き着いてくるレッドに微笑んでいたけど、しっぽを見て真っ青。
「こここコンお姉さまの子供とか!」
「レッドはこの間、交番に捨てられていたの」
「そ、そう、よかった」
「コンちゃんよりも、ミコちゃんと仲良しだよ」
「そ、そう……ミコお姉さまと……」
「うん、コンちゃんはレッドに素っ気ないけど、ミコちゃんは一緒にどら焼き作ってたく
らいだもん」
「そうなんだ……」
「ミコちゃん、子供が欲しいって言ってたしね」
「ミコお姉さまは、この子と一緒にこのどら焼きを作っていた……のですね?」
「うん、そうだよ」
「なんで、配達はポンちゃんなんですか?」
「あ、ミコちゃんは学校と老人ホームに配達してると思うよ、コンちゃんは面倒くさがり
屋さんだから配達なんてめったに……」
「なんでこっちに配達してくれないの……」
 うわ、なんだかダークなオーラを背負ってますよ。
 わたし、早く帰りたいな〜
 レッドはたまおちゃんに抱き着いて離れそうもありません。
 でも、早く退避しましょう。嫌な予感しまくりです。
「じゃ、レッド、帰ろう〜」
「いや、もうちょっといる」
「わがまま言うと漢がさがりますよ」
「えーゆーいろをこのむ」
 余計な事知ってますね、それはわたしが教えてないからコンちゃんから聞きましたね。
 って、たまおちゃんがにやりとしています。
「じゃ、この子……レッドは私が後で連れて行きますから」
「あ、そう……交番まででいいよ」
「え? 交番? なんで?」
「交番のシロちゃん、うちで居候になったから、お仕事(?)終ったら夜はパン屋さんに
来るから」
「ちょ……なんですかそれ!」
「うん、シロちゃんはうちの居候……」
「ど、どーしてそんな事に! 私もお姉さまと一緒がいいのに!」
「なに言ってるんですかモウ」
 ミコちゃんムッとした顔してます。
 ああ、早く帰りたいなぁ。
「あ、じゃ、ちょっと待って、明日は観光バスが来るから、注文を書きます」
「あ、はいは〜い」
 わたしが待っていると、たまおちゃんサラサラ注文を書いて封筒に入れて持ってきまし
た。
「はい、ミコお姉さまによろしくね」
「は〜い、じゃ、レッドは交番のシロちゃんにね」
「うん、ヌシを捕まえた犬のお巡りさん」
「そうそう、警察の犬」
 わたし、注文の封筒を持ってパン屋さんに戻ったんです。

 わたし、注文の封筒を持ってパン屋さんに戻ったんです。
「あ、ミコちゃんもう帰ってたの」
「ええ、別に配達だけだったし」
「これ、たまおちゃんが明日の注文って、観光バスが来るって言ってた」
「はいはい」
 って、ミコちゃん封筒の中を見て、一瞬ピクッてきました。
「どうしました?」
「ポンちゃん、本当に注文って言ってたの?」
「うん、言ってたけど……」
「レッドちゃんはどうしたの?」
「たまおちゃんがお気に入りで……眼鏡フェチで……置いてきちゃったよ」
「ほら」
 ミコちゃんが注文書を見せてくれます。
 あれ、これは注文書じゃないですね。
 なになに?
illustration bonoramo
「レッドは預かった、返してほしくばミコお姉さま一人で神社まで来るように……ですか」
「あのダメ巫女ちゃんは、なんて事を!」
「レッド、たまおちゃんお気に入りだったから、あっちの子になったらいいのに」
 途端にミコちゃんチョップ炸裂。
 わたし★一つのダメージ。
「ちょ、なんでわたしを叩くんですかっ!」
「今度そんな事を言ったら、ポンちゃん追い出しますよ!」
「み、ミコちゃんこわい……でもでも」
「でもでも?」
「ミコちゃんもいけないんだよ、神事を教える約束じゃなかったっけ」
「だ、だってあの娘、なんだか私を見る目が変」
「あ、それ、わかるかも、『ミコお姉さま』だし、お姉さまってなにかな」
 わたし、改めて手紙を見てから、
「ミコちゃん取り返しに行けばいいのに」
「その……つもりだったけど……」
「そのつもりだったけど?」
「コンちゃんに頼みましょう」
「なんでミコちゃんが行かないの?」
「だってほら、私、リミッター我慢できるかわからないから」
「……」
「たまおちゃん、殺しちゃうかも」
「それならコンちゃんの方が、まだマシかも」 

「これ、ボンクラ巫女、おるかの」
 そんなわけでコンちゃんと来ました。
 あの手紙には「ミコお姉さま一人で」って書いてあったけど、コンちゃんの時点で約束
破りだから、わたしがついて来ても、この際どーでもいいでしょう。
「あら、コンお姉さま、どうして?」
 レッドを抱っこしてたまおちゃん登場。
 ミコちゃんじゃなくてコンちゃんが来たのに驚いたみたいだけど、コンちゃんならコン
ちゃんでもよさそうな感じです。
 たまおちゃん、わたしをじっと見て、
「私、手紙にミコお姉さまって書いたつもりだったけど」
「あ、わたしも見たけど、ミコちゃんすごい怒ってたよ」
「え……」
「レッド誘拐したら、そりゃミコちゃん怒るよ」
「なら、なんでミコお姉さま本人が救出に来ないんです? 来ると思ったのに!」
「あー、ミコちゃん怒りで我を忘れそうだから……代打コンちゃん」
「そ、そんなに怒ってたんです……」
「ま、まぁ……」
 わたし達の会話を傍で聞いてたコンちゃんは、うんざりした顔で、
「おぬしのせいで、わらわがわざわざ出向く事になったであろうが!」
「す、すみません……」
「おぬし、一体なにがしたいのじゃ」
「ミコお姉さまが全然かまってくれないな〜とか……」
「……」
「一緒にいたいな〜とか……」
「なんじゃ、そんな事か、テキトー言って居候決めればよいのじゃ」
「え!」
「警察の犬はレッドにやられたから居候じゃ」
「この子に……」
「たまおもレッドにやられればよいのじゃ」
「この子に……」
 沈黙……たまおちゃんが考えながらコンちゃんに、
「あの、コンお姉さま……」
「なんじゃ」
「私、この間ポンちゃんにやられたんですけど……」
 え……そこでわたしが出るんですか!
 それにあれは正当防衛のはずですよ!
「それでよかろう、ほれ、着替えを持って家に帰るぞ」
「こ、コンちゃんなに勝手な事言ってるんですかーっ!」
「なんじゃポン、大きな声を出しおって!」
「たまおちゃん居候になっちゃうんですよー!」
「よいではないか、にぎやかになって」
「そ、そんな……またわたしのせいになりそうなのにっ!」
「そうじゃろう……それにたまおが来ればミコも面白い事になりそうじゃしな」
 あ、コンちゃんニヤニヤしながら行っちゃいます。
 今回一番得してるのはコンちゃんかも。
 こ、この女狐っ!!


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NCP5(2009)
illustration bonoramo(Plastic Designer)
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