■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■ コンと村おこし 「お酒は二十歳になってから」 ■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ うむ、今回はわらわが主役じゃ。 ここのところ、ポンはたまにわらわに噛み付く。 あやつは野良でわらわは神というのに、おそれを知らぬ。 しかし、ここではあやつが先輩故に、相手をしてやらねばならんのう。 「コンちゃん、今日はビールでいい?」 お、ミコじゃ、 「うむ、ビールでよい、冷えておるのであろうな」 こやつとは昔いろいろあったが、今では仲良しじゃ。 わらわの思っておる事もよくわかっておるようじゃ。 「はい、どーぞ」 「うむ、よく冷えておる」 缶ビール、昔はなかった味じゃ。 この泡といい、冷蔵庫で冷えているところといい、なかなかなのじゃ。 「ビールは美味いのう」 「そうね……って、コンちゃんなんでも好きじゃない」 「まぁ、酒はのう」 ミコと一緒に晩酌。 するとポンがのこのこ出て来おった。 「あ、二人とも、なにしてんの?」 「子供はさっさと寝るのじゃ」 「む……コンちゃんわたしを避けてるね」 「その通りじゃ」 ポンめ、わざとわらわの隣に座りよった。 すぐに缶ビールを見て、 「あ、二人だけジュース!」 「ジュースではない、ビールじゃ」 「えー、本当かなー!」 「大人の飲み物なのじゃ」 「えー、本当かなー!」 む、わらわのビールをクンクンしおる。 ポンがそんな事をすると、ビールがまずくなりそうじゃ。 「やめぬか、匂いをかぐのは」 「匂いくらい、いいじゃない」 「大人の飲み物と言うておろうが」 「変わった匂いですね」 「じゃろうが、ジュースではなかろう」 「でもでも、炭酸ですね」 「……」 「わたし、炭酸のシュワっとしたのは大好き」 むう、この仔タヌキ、ビールを飲みたそうにしておる。 『ねえ、コンちゃん、まずいんじゃないの』 お、ミコめ、テレパシーじゃ。 『なにを言うかの?』 『ポンちゃん興味津々』 『うむ、仔タヌキゆえに、そんなところじゃろう』 『コンちゃんどうするるつもり?』 『それは、ビールは大人の飲み物故に飲ませるわけには……』 そうじゃ、飲ませてみればいいのじゃ。 どうせ大人の味はポンにはわからぬ。 「ポン、それほどまでに飲みたいのかの?」 「え、いいの!」 途端にミコの肘がわらわをつついてくる。 『コンちゃんっ!』 『どうせポンにはわからぬ』 『作品が十八禁になっちゃうから』 『こやつはタヌキ故に、問題ない』 わらわが缶ビールを渡すと、ポンめ嬉しそうに口を付けおった。 何度か喉が鳴って飲むのをやめて、嫌そうな顔をしておる。 「ナニコレー!」 「だから言うたであろう」 「苦い……こんなの飲んでたの、変なの」 「大人になったら、この味がわかるんじゃ」 「じゃ、わたし、大人にならないでいい」 「店長と結婚できんぞ」 「う……」 ポンめ、黙り込んでしもうた。 お、なにを考えておるのじゃ。 わらわのビール、一気に全部じゃ。 「ぷは、全部飲みました、これで大人の女になりましたか?」 「ポン……おぬしなかなかやるのう」 「でも、もっと別のお酒がいい……ビール苦い」 「ふむ……」 では、甘い酒でもふるまうとするか。 たしか梅酒の一つもあったろう。 『ちょ……コンちゃんまだ飲ませるの!』 『ミコ、心配せんでもよい、あやつはタヌキ故に発禁にはならぬ』 『でも、仔タヌキなんだし』 『おぬしも、あやつがどうなるか、興味ないかの?』 「それは見たいわね」 最後は声になっておる。 わらわが梅酒、ミコがグラスに氷を持って、 「ほれ、ポン、これは甘いぞ」 「これを飲んだら大人になるんですか?」 「大人の飲み物じゃからのう」 「いただきま〜す」 ポンめ、ちょっと回っておるようじゃ。 梅酒、ちびりちびりやったら顔色が変わりおる。 「これ、甘〜い!」 嬉しそうにゴクゴク飲みはじめおった。 あっという間に持ってきた分を全部飲んでしもうた。 「うふふ、おうちが回ってま〜す」 ミコが心配そうな顔をして、 「ねぇ、コンちゃん、いいのかしら」 「まぁ、最初はわからず飲むから、こんなものじゃろう」 「死んだりしないわよね?」 「うむ、ポンが死ねばわらわがここで一番じゃ」 「怒るわよ」 お、噂の主が立ち上がった。 「えいっ!」 「きゃっ!」 「ミコちゃ〜ん!」 おお、ポン、いきなりミコを押し倒しよった。 「むちゅーん」 「むぐ……」 おお、有無を言わさずキスじゃ。 なんだか嫌な予感がする。 あ……ミコが落ちた。 これは本格的にピンチじゃ。 「コンちゃ〜ん!」 「どわ、来るなっ!」 「コンちゃん大好き〜」 「ややややめやめっ!」 「むちゅーん」 「むー!」 こ、こやつのキスはこの間以来じゃ。 う、うわ、舌を入れてきおった。 しっぽもつかまれてしまった。 「えへへ、コンちゃんのしっぽ、つかまえた〜」 「やめぬか、わらわが悪かった」 「別にコンちゃん全然悪くないよ〜」 「も、もうゆるしてっ!」 「弱気なコンちゃんかわいい〜」 「し、しっぽはやめるのじゃ」 「むう……ふさふさで気持ちいいのに」 笑っていたポンが真顔になった。 さらに嫌な予感がする。 ポンは何故か自分のしっぽを持っておる。 「ねぇねぇ、わたしのしっぽ、かわいい?」 どうでも……しかしここで気持ちを逆撫でしてはどーなるかわからん。 「う、うむ、かわいい、かわいいぞ!」 「きゃー、コンちゃんに褒められた!」 「い、いいから放すのじゃ」 「コンちゃんがわたしのしっぽをお気に入りなら……」 「お気に入りなら?」 「わたしのしっぽ、プレゼントしちゃう」 「えっ!」 「わたしのしっぽで、気持ちよくなってもらう!」 「えっ! えっ!」 「ふふふ、太くてざらざらですよ」 うわ、今やエロポン顔になっておる。 ちょ、しっぽを押し付けるでない。 こ、こそばゆいではないかっ! ま、まさか本気で挿れるつもりでなかろうな? う……なんか「ゴン」って音がしたぞ。 目を回してしまうポン。 そこには酒瓶を持ったミコが立っておった。 「やっぱりポンちゃんにお酒は禁止」 「う、うむ……」 ミコに助けてもらって、今回は無事じゃったぞ。 「頭痛い〜」 レジでポンは伸びておる。 客がおらんからよいようなものの…… お、今日はミコがお茶を持ってきた。 「はい、コンちゃん」 「うむ、今日はポンが二日酔いじゃからのう」 「コンちゃんがあんなに飲ませるからよ」 「ポンに飲ませたらいかんのう」 「でも……」 ミコ、なぜだか黙り込んでしもうた。 ポンの方をじっと見て、生唾飲んでおる。 「どうしたのじゃ、ミコ」 「ねぇ、コンちゃん、昨日の事なんだけど……」 「うむ?」 「ポンちゃんのしっぽ、どうだった?」 「!!」 「太くてすごそうなんだけど……」 わらわとミコ、ポンのしっぽを見ながら耳まで真っ赤になってしもうた。 kmp002 for web(kmp002.htm) NCP5(2009) illustration p!k@ru (C)2008- KAS/SHK (C)2010 p!k@ru