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■               コンと村おこし                ■
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「さて、どうしたものかの」
 今回はわらわが主役じゃ。
 看板も「ポン村」ではないのじゃ。
 しかし、どうしたものかの。
 主役になったものの、こう「ゆるゆる」な話をもらってものう。
 うむ、こう、いつにない事をせんといかんな。
「……」
 見れば隣でポンが眠っておる。
 夜に店長を攻めないでどうする!
 しかし仔タヌキ故にしかたないかのう。
 お!
 良い考えが浮かんだぞ。
 ポンのヤツをからかってやるのじゃ。
 こう、五円玉に糸を通しておいて、
「これ、ポン、起きぬか!」
「むー!」
「ほれ!」
「コンちゃんなんですか〜」
「ほれ、これを見るのじゃ」
「もう〜」
「ほーれ」
 五円玉を揺らすと……
 ポンめ、つられて体を揺らしよる……
 そろそろ暗示をかけるかの……
「おぬしはだんだん眠くな〜る」
「それなら起こさないで〜」
「今、目の前におるのは店長じゃ」
「ほえ? 店長さん?」
 さて、催眠術にかかったかのう?
 ポンめ、黙り込んでしまいおる。
 まさか眠ってしまったんではなかろうな?
「ふえ、店長さん、こんな夜になんです?」
 おお、かかったようじゃ。
 ふふん、所詮は野生のタヌキ、こんなものよ。
 さて、もてあそんでやるかの。
 こう、いつもの「ポン村」ではお色気が足りんからのう。
 ここからは大人の世界じゃ。
「ポン……かわいいよ!」
「ふえ、店長さん」
「ポン……君が欲しいっ!」
「ええっ!」
「ポン……いつも君だけを見ていたっ!」
 あー、歯が浮くのう。
 でも、ポンのヤツ、急にもじもじし始めよった。
 そうじゃ、こやつ、捨ててある本で勉強済みじゃ。
 この間「まだ」って言っておったのう。
 くくく!
 では、初めてをもてあそ……
「店長さんっ!」
 どわっ!
 いきなり抱きつくなっ!
「むー!」
 わわわっ!
 いきなりキスかっ!
「店長さん好きっ!」
「ややややめいっ!」
 ふう、やっとキスから解放された。
 ……って、こら、ポン、なにをやっておるっ!
 パジャマのボタンをなんで外すのじゃっ!
 自分から脱ぐのかこの仔タヌキは。
「店長さんに、初めてをあげますっ!」
「あー、こら……」
「わたし、決めてたんですっ!」
「う、うわ、どーやったら催眠術解けるんじゃ」
「わたし、勉強してるんです」
 ち、近寄るな……
 う、うわ、抱きつくな……
 や、やめ、ひっつくな……
「男の人は、おっぱい星人ですよね」
 やーめーろー!
 抱きつくなー!
「わたしのおっぱい、どら焼き級でごめんなさい」
 ちょ、ちょっと!
 こら、しがみつくでない!
 わ、胸を顔に押し付けるな!
 い、息かできんっ!
 こ、こんな標高の低い胸で窒息するのかっ!
「わたし、恥ずかしいけど、我慢しますっ!」
 ど、どわっ!
 脚を絡めるでないっ!
 に、逃げられんっ!
「店長さんの息が、くすぐったい!」
 こ、こっちは窒息寸前じゃっ!
 な、なんというバカ力!
 さ、さすが野良タヌキという事か?
 こ、これはもしかして、なにかの寝技とか!
「店長さん、強く、強く抱いてっ!」
「むー!」
「背中が、背中が折れるくらいっ!」
「ぬー!」
 なにが背中が折れるくらいじゃ!
 こっちの方が首がへし折られそうじゃ!
 おお……腕の力が弱くなったぞ。
 今のうちに逃げるのじゃ。
 ……って、両手で頭をつかまれたぞ。
「むちゅーん!」
「ぶっ!」
 どわっ!
 またキスかっ!
 し、舌を入れるなっ!
 ああっ、もう、舌を絡めるなーっ!
「店長さん、もっと!」
「も、もうやめるのじゃ!」
「わたし、痛くても我慢するから!」
「わらわが悪かったから、目を覚ましてくれ!」
「店長さんのしっぽを、わたしの中に入れてーっ!」
「え!」
illustration はづきゆう
 ちょ、ちょっと……
 今までにない、嫌〜な予感じゃ。
「店長さんのしっぽ」をどうするつもりかの?
「は、早く入れてー!」
 うわ、しっぽつかまれた!
 ひ、ひっぱるな!
 も、もしかしてわざとやっておらぬか?
「店長のしっぽ」ってなによ!
 ええっ! ポンよ!
「店長さーんっ!」
 ぎゃっ!
 痛いっ!
 しっぽちぎれるっ!
 は、放してポン!
 ポンちゃんおねがい!
 おねがいポンさま!
 ポン先輩もうゆるして〜!

 ふう、昨晩は大事じゃったわ。
 思い出すのもおそろしい。
 こうしてまた店内でお茶をしているのが奇跡じゃ。
 むー、首筋が痛い……ポンのバカ力め。
 ふむ、まだお茶がないのう、
「ポン、お茶がまだじゃが」
 お、すぐさまやってきたか。
 言われる前に茶くらい出さぬか。
「はい」
「!!」
 ポンのやつ、湯のみを乱暴に置きよった。
 ちょっとこぼれておるではないかっ。
「コンちゃん昨日の夜、わたしにいたずらした」
「知らん」
「わたし、裸にされてたもん」
「おぬしが勝手に脱いだのじゃ」
「わーん、コンちゃんのバカ馬鹿ばか!」
 むー、そんなにポカポカ叩くな、うっとおしい。
「だいたい抱きついてキスしてきたのはポンの方ではないか」
「えー! コンちゃんとキスしたの!」
 おお、ポンめ、今度は滝のような涙じゃ。
「うえっ……わたしのファーストキッスは店長さんの筈だったのに!」
「寝ぼけたおぬしが勝手に……」
「コンちゃんのケダモノ!」
 まぁ、一応キツネ故、そうかのう。
「コンちゃんの女狐!」
 まぁ、確かに女狐よのう。
「わーん!」
 泣くなモウ。
 お、店長が来た、助け舟の一つも出してもらうか。
「店長さん、わたしのファーストキッス、コンちゃんに盗られた〜」
 う、ポンに先を越された。
「コンちゃん、ポンちゃんになにしてんの?」
「うう……ポンが寝ぼけてたんじゃ」
 とりあえず言い分けして……って、店長、なんでひも付き五円玉を!
 す、すると全ては筒抜けなのかの?
「そ、それは、ポンの本性を明かすべく」
「ふーん」
 む、店長の目が冷たい。
 これを跳ね返すにはポンに罪を着せるしか!
「そこのタヌキ娘は『店長さんのしっぽを入れて』とか言っておった」
 ふ、店長どん引きじゃ。
 ポンは耳まで真っ赤ときた。
「コンちゃんのバカーっ!」
 どわ、叩くな、痛いっ!
「コンちゃんなんか嫌いっ!」
「ポンなんか好かん」
 おおっ! なんじゃ、店長、こわい目をして。
「二人とも!」
 ぎゃっ! しっぽをつかむでない。
 まだ昨日ので痛いのじゃ。
「今夜、外でお休みね」
 えー!

 夜、店のドアの前じゃ。
 今宵の寝床はダンボール。
「反省」なんて書かれておる、まったく。
 隣には膝を抱えてポンが座っておる。
 ケンカはしたが、今は離れられんのじゃ。
 寒いから、体をひっつけてないとな。
「むー、寒〜い」
「ポン、離れるでない、冷える」
「そ、そうだね」
 とりあえず、仲直りじゃ。


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